
がーるず・らぶ 里美と結の場合(R18)
第7章 猫は大人に染まれば虎になる
「………………(大汗)」
「………………う〜む……」
目の前で起こっている出来事に、私と兄貴はただただ呆然としていた。
「♪む〜か〜しぃ ぎりしぁ〜の いかろ〜す〜がぁ〜、ろおおでかたぁめぇたぁ〜 とりのぉ〜はあぁ〜ねえぇ〜♫」
私達の眼前では
片手に缶チューハイをマイクみたいにしっかり握り、空いてる腕をぶんぶん振りながら、ズレまくりのテンポと音程を振り撒いて、ユイ・イガラシのスーパーステージが繰り広げられていた。
「な、なかなかおもしろいこだなぁ おにいさんはついていけないぞぉ」
「兄貴、セリフが棒読み」
私は時々こちらへニコニコしながら
「せぇんぱぁい♡楽しんでますかぁ?」
と、ディナーショーの主演アイドルからの呼びかけに、引きつった笑顔を返すのでいっぱいいっぱいになっていた。
「兄貴、アンタ……
まさか、結の飲み物にアルコール注ぎ足したりしてないでしょうね?」
「景気付けに、ちょっと、だけ」
「どのくらい?」
「ティースプーン一杯分ほど。マジで」
「そう言うおまーも、何かやっただろ?」
「スプライトに、焼酎を、お猪口1杯分」
……こんな事も流石は兄妹と言うべきか。
考えた事は同じらしい。
下戸だから、と言ってアルコールを辞退した彼女だったが、それは女子飲み会における社交辞令だと。
彼女も、そう言いつつ、実は家に帰ればビールをきゅっ!とやっているクチだろうと。
だから、少し入ってるアルコールに気が付かないまま飲み干して、美味しいと言う相手に
「それ、アルコール入ってるんだよ?」
と、からかい、相手が慌てるか赤面するのを見て楽しむ……
お約束ドッキリを…………
つい、いつもの癖でやってしまったのだ。
私達って、性格悪い?(苦笑)
だってさぁ。
せっかくの楽しいお酒の席で、ブリっ娘してネコ被る子って空気読めてなくて嫌いなんだよね。
そのくせ、“私をお持ち帰りして♡”アピールが強かったりして、さ。
しかし、今回は別に、結がそうだったから、と言う訳ではなく。
ただ、魔が差しただけ。
飲んで、少し酔って……イタズラしてみたくなっただけ。
……それだけだったんだよ(泣)
