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まこな★マギカ
第14章 第九ノ一章
彼女は急にぴたっと泣き止んで、起き上がったかと思うと、俺の身体から速やかにどき、足元のソファーに座り直した。そして何事もなかったかのように前を見て言った。「もう、死んだふりするなんて、最低ね」
「するかよ――つうか、出来るわけがねーだろ、そんな事!」俺はいつものように言い返して、それから彼女に手を差し出した。「それよりまこな、起き上がるの手伝ってくれないか。身体がすげえ重いんだ」
「もう、なんなのよ……おじさんはこれだから――年は取りたくないないわね」まこなは嫌々ながらにも俺の手を握り、自分の方に俺の身体を引き寄せた。
「おい、おじさんはねーだろ。俺はまだぴちぴちのハタチだぜ――」と言い返していた時に、俺はまこなの腕に目を奪われた。あれ……無い――。そして唖然とした。先ほど目にしたはずの彼女の腕に走る無数の傷あとが、一切消えて無くなっていたからだ。まこなの白くて細い腕を見つめたまま瞬きを繰り返していた。
するとまこなが言った。「いいえ、二十を超えたらおじさんよ――そんな事よりも、いつまで握っている気なの?」
そこで我に返り、俺はとっさにその手を離す。「あ、ああ――すまんこ」
まこなは肩にかけた上着の縁を引っ張りながら掛け直すと「もう、あなたがセクハラ魔だって事をタイムラインに投稿してやるんだから……」そう言って、やおらソファーから立ちあがった。「ねえ、お手洗いはどこかしら?」
「ああ、トイレかよ……」そうこたえてからカナメに向かって言った。「カナメ、わりぃんだけど、トイレまで案内してやってくれないか?」
「ああ、良いっす――」
カナメが言い終わる前に、まこなが俺に言った。「はっ、何言ってんのよ。あなたが案内しなさいよ。わたしの指名者なんでしょ」
「いやいや……。身体が重くて動けねぇんだよ」
「何言ってるのよ、もう動けるわよ」
「無理だって、まだ……」――いや、彼女の言うとおりだった。身体がすんなりと動いた。「あれ、全然重くない……」まこなが何かしたのだろうか――いや、それより……。俺はすでに歩き始めていたまこなを呼び止めた。「お、おい、まこな――でも、大丈夫なのかよ?」
「えっ、なにがなの?」
まこなの方に寄っていき、俺は声を押し殺して訊いた。「い、いや……だから、そんな格好で店の中を歩いても良いのかよ?」
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