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まこな★マギカ

第14章 第九ノ一章


「ああ、それな」まこなはこたえた。「大丈夫よ、心配しなくても。あの件ならうまくいったわ」

「そっか……うまくいったのか」その言葉に、俺は胸をなでおろした。

「だから、もうこれも必要ないわね」まこなは俺の上着を脱ぎ、それを俺に渡してきた。

「ああ、そうだな……」と言って、俺はまこなからジャケットを受け取るとそれを羽織った。その瞬間、ふとなんだか懐かしい匂いがした。

それから俺達は、まこなを30番テーブルと40番テーブルのちょうど真ん中にある、トイレへと案内した。


「いや〜、なんか不思議な子っすね~。まこなちゃん、って……」トイレの手前に設置されたタオルウォーマーからおしぼりを取り出していると、カナメが言った。

不思議どころじゃねぇよ――それはもちろん口に出さずにこたえた。「まぁな、確かにちょっと変わってるのかもな」そしてそこでふと思い出した、意識を失う前にカナメの声が聞こえていた事を。「つうかカナメ、おまえ俺が気を失う前、あの席にいたよな?」

「あっ、ええ、いましたよ。ちょうど戻ってきたところだったんで」

「で、どうして俺はああなったんだよ?」

「えっ、それは、俺が聞きたいぐらいっすよ――」カナメは曖昧な表情を浮かべている。「俺が帰ってきたら、あの席でゆーきさん目隠ししながらまこなちゃんとディープキスしてて――」

「してねーよ、ディープキスなんて!」俺はとっさに言い返す。「……なんでそれ限定なんだよ!」

「えっ、でも、キスしてましたよね、あん時? そんでそっから急に倒れたんすから、ゆうきさん」

「あ、ああ……まあ、強いて言えばしてたかもしれない、けどな……」俺はあの時の記憶を手繰り寄せた。確かにあの時唇に柔らかいものを感じて、それから意識が遠のき始めて……それを思い出したのだ。「でも、あれはディープキスじゃねーからな!」

「わかってますよ、ゆうきさん――安心してください」カナメは、あたかも心得ているのだと言う表情を見せた。「なるべく言わないようにしますんで」

「絶対言うんじゃねぇよ、そんな事は!」

「ヒューヒュー!」

「じゃかしいわい! その唇、噛みちぎるぞ!!」俺はカナメに言ってから訊ねた。「つうか、そんな事より、どんぐらいあの状態だったんだよ?」

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