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まこな★マギカ

第15章 第九ノニ章


「うん。もちろん良いわよ」和子はにっこりと微笑んだ。それからさやかとの間に置かれたバッグの中から名刺を一枚取り出すと、俺に差し出してきた。「何かあったら、連絡してくれれば、いつでも相談に乗るわ――と言っても、私の都合のいい時になっちゃうんだけれど……」

「もちろんそれでも構いません――その時はぜひお願いします」俺はその名刺を両手で受け取ると、自分の名刺入れの中にそれをしまい込んだ。

「ええ、わたしなんかで良ければ――喜んで」和子は言うと、再び思い出した様子で小声で言った。「――そんな事よりも、早くさやかの隣に行ってあげて。さっきはあんな風に言ってたんだけれど、ゆうきちゃんの事すごく気にしていたんだから」

俺はわずかに照れながら訊ねた。「そ、そうなんですか?」

「うふふふっ……うん。さやかの事お願いね」

和子が笑顔で言うと「わ、わかりました……」と俺はこたえてソファーから立ち上がり、さやかの隣に向った。

隣に着くと、さやかに言った。「ただいま」そしてソファーに腰をおろした。

「うん、おかえりなさい」さやかもそれにこたえて、それから目の前のロックグラスに注がれた酒を一口飲んだ。「それで、和子さんの話しはどうだったの?」さやかはどことなく物憂げな表情を浮かべている。

そんなさやかを見て、俺は全力で笑顔をつくる。「あ、うん、全然たいした事じゃなかったよ」

けれども、それはどうやらさやかには通用しなかったらしい。「和子さんって、そっちの方に敏感――っていうか、結構当たるって評判みたいなんだよね、巷では――」さやかは表情を変えずに喋り始めた。

「えっ――って事は、さやかも知ってるのかよ?」

「うん――だって、わたし達って、そもそもそれがきっかけで知り合ったようなもんだから」

「それがきっかけ……って、なにがあったんだよ?」

「うん。ちょっと前にね――わたし、けっこうきつめのストーカー被害に遭ってたんだけど。その時に、どうして良いのかわからなくて……。それで困ってたら、ある時、お客さんが和子さんを紹介してくれたんだ――」とさやかが話している時だった。突如としてスピーカーから《イイ波のってん☆NIGHT》が流れ始めた。そこでさやかははっとなり目の前のグラスを持った。「あっ、てかごめんね――せっかくゆうきが戻って来たのに、なんか重たい話しちゃって」

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