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まこな★マギカ

第5章 第四ノ一章


「全然大丈夫じゃないじゃないっすか!」と言って、慌てて俺を両手で支えるカナメ。

「いや、すまん。て言うか、立とうとしたらなんだか身体がすげぇ重くてよ」俺が言っていると「グルルルル……」と言う音が静かに聞こえてきた。それは俺の腹からだった。

それに気付いてカナメが言う。「ゆうきさん、早く帰ってなんか食ってくださいよ。もう杏子も来てますんで」

「え、だったら、焼き肉でも喰ってかねぇか?」俺は親指で焼肉屋を指さしながらカナメにこたえた。焼肉屋も喫茶店と同様に営業を始めていたのだ――いや、きっとこの店も始めから営業していたのだろう。

そう思って、焼肉屋をまじまじと眺めているとカナメが言った。「だめに決まってるじゃないっすか! いい加減早く帰りましょうよ」

それから、カナメに支えられて俺はようやく立ち上がる事が出来た。目の前には、いつものこの通り、東通りの景色が広がっていた。いつもの歌舞伎町の景色。いつもと同様少しだけ鬱蒼としていて、だけれども、不思議と気味が悪いとは思わなかった。それどころか、妙な懐かしささえ感じていた。

喫茶店の隣のビルも、先程とはほとんど変わっていない。ただし、一つだけ確実に違うところがあった。一階の入り口にはシャッターが降りていて中の様子が全く分からなかったのだ。

そのビルを尻目に、俺達は再び――いや、三たび――いや、それはきっと三度目の正直と言えるのではないか……。パリナに向かって歩き出した、のだった。




  









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