まこな★マギカ
第8章 第五ノニ章
「いや、それは……わかりません」と俺はこたえると「どんな感じの女でした?」とさらに訊いた。
「ああ、はい、そうですね……」とキュウベーさんは少々考え込んでからこたえた。「見た目は普通の感じでしたよ。ですが、とても若そうな方でした」
「そ、そうですか……」見た目を聞いたところで所詮わかはずもないのだ。「あ、それで、何番にいるんですか?」
「ええ、27番にお通ししました」
「わ、わかりましたよ。なるべく早く行きますんで――」
「いえ、適当にヘルプのものを付けときますので、急がなくても大丈夫ですよ。それよりも20番の方をお願いします」キュウベーさんはそう言い終えると、くるりと向きを変えてキャッシャーの方へと歩いていった。
その姿をしばし見送ると、俺も向きを変えて20番テーブルに向かった。
席に着くと「和子さん、すみません」と言って、和子に軽く会釈をしてから「さやかも、ごめんな」と言って、その隣に腰をおろした。
「うんん。全然。気にしなくても良いのに」とさやかはこたえた。「それより、お客さん来たんじゃないの?」
「あ、うん。そうなんだ……」
「そっか……。なら良かったじゃん」
笑顔でさやかが言うと、俺は「え、ああ、うん……」とだけ言った。
目の前には、新しいグラスとコースターが既に用意されていた。それを見るなり、即座にテーブルの中央にあるビール瓶をつかんでビールをそのグラスに勢いよく流し込んだ。けれども、グラスには泡ばかりでビールはほとんど残らなかった。
その泡だらけのビールをさっとつかんで一気に飲み干すと、今度はビール瓶の隣に置かれていた鏡月のボトルをつかみ、蓋を開けて、それも目の前のビールグラスに勢いよく注いだ。
「ちょ、ちょっと。そんな飲み方って……平気なの?」と慌ててさやかが言う。
「全然。こんなの余裕だし、ちょろいちょろい」と言ったその直後、グラスを持ってその鏡月も一気に飲み干した。
なにやら熱いものが喉を通ってさらに胃のあたりにまで流れ込んできたかと思うと、みるみるうちに顔が熱くなり始めた。
「てか、どうしたのさ、いきなり……」と不安気な表情でさやかが訊いてくる。
「いや、なんだか、急にすげぇ喉が乾いちゃって」と無理やり笑って俺はこたえた。