先輩!彼氏にしてください!
第9章 青春の文化祭
人だかりの中心を背伸びしながら探し出す。
「………あれって…」
見覚えのあるイケメン。
人だかりのせいで前へ進まないのか、立ち止まりながらもなんて事ない顔をしている谷川くんを見て、私は何度も瞬きを繰り返した。
え?
いや、谷川くんて、そりゃイケメンだけど、こんなに人だかりができるほど???
いつもあまりに近くにいるせいで、感覚が鈍っていたのかもしれない。
眩く輝く谷川くんは、物理的にも手の届かないところにいる。
『ほのか先輩っ…』って、いつも切なげな声音で私の名前を呼んでた彼と、今目の前でまるでどこかのアイドルみたいな扱いを受けている彼が、どうしても同一人物に見えなくて、呆然と立ち尽くす。
すると、私の視線に気付いたのか、ハッとした谷川くんは私の方に視線を投げた。
少しむしゃくしゃして、口パクで『仕事しろ』と言いかけようとしたその瞬間
「───────────………」
スーッとまた無視をするように視線を逸らされて、私は口をポカンと開けた。
もう私と視線すら合わせたくないと、そういうわけですか。
ったく。
四六時中付き纏って、好き勝手してきたと思ったら、今度はこれ。
まぁもう勝手にしたらいい。
そもそも谷川くんの周りには死ぬほど女の子がいるわけだし、私に執着する方がおかしい。