先輩!彼氏にしてください!
第5章 彼氏までの道のり ─ 序 ─
「なんか美術室ってヒンヤリしてるよね」
「そう、ですかね……」
「うん」の返事をしながら、ほのか先輩は腕をさすっている。
モデルをお願いしてから、はじめての日。
毎日見ていて、毎日会っているけれど、やはり未だに2人きりは緊張するというか、胸がドキドキして止まらない。
「寒いですか?」
「……いや、大丈夫」
今日もプールの授業があったんだろう。
まだ少し濡れている髪が制服をも濡らして、少し透けている。
それがいつも以上に艶かしくて、思わずため息が漏れた。
「それで? どんなポーズ取ればいいわけ?」
「あ、えーっと…」
辺りを見渡し、近くにある椅子を先輩の方へと持っていく。
そして、座ってもらうように促すと適当な紙を見繕ってそれを先輩に渡した。
「あの……その紙を読む感じで」
「これ?」
「はい」
「持ってきた本でもいい?」
「あ、はい」
「良かった」と返事をした先輩は自分のカバンから本を取り出すと、再び僕の用意した椅子に座った。
「これでい?」
「……はい、あの…全校生徒に呼びかける感じで、お願いします」
僕の要望に、先輩は「へ?」と首を傾げた。
何をしたってかわいい。
今この瞬間を独り占めできていることが本当な幸せに感じた。
「あの……入学式とかで、新入生に向かって話すような…」
「あー…それで何か読んでって言ったのか」
「はい」