先輩!彼氏にしてください!
第7章 天才の苦悩
「安藤さんお願い」
「な、なにを、ですか」
「谷川くんを説得できるのはもはや君しかいない!」
「え」
目をうるうるとさせた早坂先生は、「ねぇぇ……」と甘えた声を出す。
いや、説得って…
「意味が分からないです」
「このコンクールはね、全国規模の大きな物なんだよ。コンクールに出せばあの絵は確実に何かの賞を取る。それは谷川くんのためになることなんだよ」
………やっぱり意味が分からない。
谷川くんのためって……
「谷川くんは嫌がっているのに…ですか?」
「そんなことは関係ない。芸術家の端くれとして、あれを世に出さないということは大罪に値するんだよ」
随分と大袈裟だ。
流石にため息が出てそれを抑えられずにいると、早坂先生はさらに私に迫ってきた。
「何を大袈裟な…って思ってるね?」
「えぇ、思ってます」
「ちょっときて!」
「わぁ……っ」
早坂先生は、突然私の手首を掴むとそのままズカズカと歩き出す。
引っ張られる形で私は必死についていく。
方向からして美術室に向かっているんだろう。
早く生徒会室に行きたいというのに、本当にこの先生は先生とは思えないほど強引で自分勝手だ。