
仔犬のすてっぷ
第14章 優希の傷痕(調教編)
「・・・まずは、お約束から」
アケミの顔が、少しだけ以前の優しい顔になる。
「お手っ!」
僕は右手を差し出されたアケミの手のひらに乗せる。
「おかわりっ!」
僕は左手を差し出されたアケミの手のひらに乗せる。
「お座りっ!」
僕は正座状態で腕を地面につけ、其れらしいポーズをとった。
「チンチンっ!」
僕は体を起こし、膝を着いたまま立って見せる。
「アンタは今は犬なんだからさあ〜…もう少し、こう…嬉しそうにやってくれないか?」
(……う、嬉しくったって…そんなの無理だよ(汗))
「仕方無い……見本をみせちゃる」
は?見本??アンタがするの?
と、目を点にしながらアケミを見ると、彼女は真剣そうな顔で相方を見た。
「……リカ!」
「はいよっ!」
アケミに呼ばれた相方が、素早く彼女の前に馳せ参じる。
「…おてっ!」
「わんっ!」
「お座りっ!」
「わぁん!」
「お回りっ!」
「ほわん!」
「じゃんぷっ!」
「あぉん!」
ズシャアアァッ!と、ホコリを舞わせて着地を決めたリカが、なんだか分かんないポーズを取ってビシリ!と決める。
「お、おお〜!」
パチパチパチ・・・
見事なまでに楽しそうな犬をやりきったリカに、思わず拍手と感嘆の声を贈ってしまった。
「コレでも私は演劇部だからね。このくらいは朝飯前よ♫」
・・・時々、ほんとにこの人達が解らなくて…
僕、ここで、何をしとるのだろうか?(大汗)
