
仔犬のすてっぷ
第3章 風海 蒼空 (かざみ そら)
……で、彼は芸能人や、社会的権力者とか、財界のなんたらとか、国会議員とか…
色んな方々のお相手をしてきたんだそうで・・・。
「カッコつけたいから、秘書として同行させたい、とか、見栄えの悪い息子の代わりに、とか、中にはアイドルグループの話し相手とかさせられた事もあるぜ?」
ちょっと自慢げに話しているけど…それは確かに中々大変そうな仕事ではある。
しかも、適材適所を求められそうな場合もありそうだしね(秘書とか、知識必要そうだし…)
「……けど、イチバン多いのは、話し相手…慰め役だな。
いい歳のオッサン、オバサンとか、爺さん婆さんとか……
みんな、心から安心して話せる相手が欲しいんだ。
寂しいよな?一番近くにいるはずの家族にすら心が許せないんだぜ?」
………そうなんだ…(汗)
やっぱり、世の中色々あるのは、本当なんだなあ……。
僕の日常からは遥かに遠いところの話過ぎて、実感がわかない。
「…で、俺はそういうお客様に《特に口が堅い》って気に入られててさ。
秘密厳守ってのもなかなか骨が折れるんだわ、コレが」
蒼空は面倒臭そうに顔をしかめながら、ガリガリと頭を掻き、また苦笑いする。
「今回、新規のお客で、ナイスミドルな御婦人が、俺をデートに買い上げてくれたんだが……
ソイツが実は某週刊誌の回し者でさ……
ある人物に関して色々聞いてくる訳。
もちろん話せないって突っぱねてたら吐きだすまで帰さねえって、取巻きの黒服連中に袋にされてさ〜…」
(ああ。あの痣はその時の……)
僕は昨夜の、蒼空の体を拭いた時の事を思い出していた。
あの痣・・・痛そうだったけど…大丈夫なんだろうか?
