
仔犬のすてっぷ
第15章 嵐の予感
「・・・なるほど」
風呂から上がってサッパリした僕らは、風呂上がりの一杯を引っ掛けている。
風呂から一度上がり、すったもんだの“チン”騒動があってから、またお風呂へ入り直し・・・
…ようやく落ち着いた。
二度目のお風呂から、今までの間……
僕の過去について話をしたわけだけど、全部の内容を話して聞かせたのは蒼空が初めてだった。
親は、警察や児童保護員から、虐待時の状況説明しか受けていないし、警察や保護員さん達には、幸お姉ちゃんを庇うために……お姉ちゃんとセックスした事は伏せていたし。
僕がまだ精通前だったから、性液採取は出来なかったわけで……
まさか事件に関わった未成年全員のDNAを採取する訳にもいかないだろうし。
殺人があった訳でもなければ、そこまでする事もなかった訳で・・・。
僕とした事は立証が難しかっただろうし、あの二人だってそれは話さなかったみたいで・・・
〈過度な悪戯による、人権侵害〉
という処理がされている事は僕も知っている。
明美と里香の二人は、少年院に行くことも無く、学校側の謹慎処分だけで済んだらしい。
地方有力者と、PTAの会長の娘という肩書きが効いているのかどうかは分からないが、普段の素行や周りの同情が働いたのは確かで、地元ではあの後も、彼女達よりも僕の方が悪者扱いされていたのは事実だ。
「…酷い話だな。被害者がそこに居られなくなるように仕向けられたのと変わんねぇ」
ビールを1缶きゅーっと呑み干して、蒼空が吐き捨てるように呟いた。
「…仕方ないさ。あんな閉鎖的な場所は他にはなかなか無いからね。
そんな所へカーペット工場が建てられただけでも奇跡だし、そこで働いてた父さんも凄いよ。風当たり強かっただろうにさ」
その父さんのおかげで僕や弟は何不自由なく育てて貰えたわけで。
僕は今だから尚更…父さんを尊敬している。
あの事件の時も、何も聞かず……僕のやりたいようにやらせてくれたから、今の僕がいるんだと思っている。
