
仔犬のすてっぷ
第16章 潜入!ボーイズ・バー
・・・結局。
僕の身柄は、歩美さん預りに落ち着く事になった。
表立って襲ってくる事はまず無いだろうけど、けれど、もし相手が形振り構わず行動してきた場合に、不特定多数のお客様を抱える店内での犯行が行われた場合・・・
最悪のシナリオへ発展する可能性が高い。
ーーー これが、その理由だった。
「パチンコ屋で人質を取っての立て籠もり事件なんぞされたら、どんだけ犠牲者が出るか・・・
満席で約300人。
全員を混乱させずに安全を確保するのは不可能に近い」
その時の状況を想像したのか、森川店長の顔は今まで見た事も無い程の険しい物になっていた。
「・・・しかも、その原因の要因ってカタチで優ちゃんや蒼空が槍玉に上げられる可能性が高いから・・・
結局、スクープ系雑誌の鴨にされちゃうわよねぇ・・・
それこそあの女狐の思うツボ。面白くは無いわ」
クリームソーダのグラスに刺さっていたストローを歯でギジギジと音が出る程噛みながら、歩美さんが悔しそうな顔をする。
「警察は、基本事件が起こらなければ動けないし、事件が起こってからでは遅い。
しかも、なんだかんだでパチンコ屋は立場が弱いから・・・事件が起こる可能性があるのに営業した責任を問われる事もある。
起こるか起こらないか現時点で分からないのに休業する訳にもいかんし・・・」
僕と蒼空は、お互いに顔を見合わせる。
もう、コレは僕達二人の問題じゃ無いんだと、この大人達の会話からも事の重大さが解る。
「一応、警察は何人か動かして桜明について調べているらしいが・・・それは今回の件があったからだ。いまさら林原のアパートを張ったりして意味が分からんし、動きが遅いしあまり当てには出来ん」
・・・アパートに、警察の監視が付いているってのは正直気持ちのいいものでは無いなぁ……。
その桜明って女性が捕まらないと安心は出来ないのか・・・・・・。
「それに比べれば、ウチなら警官も補助店員として紛れ込ませやすいし、お客様が入ってもせいぜい2、30人位だし、まだ守りやすいかしら?」
歩美さんが、仕方無い、と肩を竦めるジェスチャーを取って苦笑いした。
