
仔犬のすてっぷ
第22章 Played Fight a Waltz Steps
とっとっとっとっとっ・・・
ヴォオ〜〜………
ブオォ〜…
フィ〜〜ン…フィ〜〜ン……
霧のたちこめる、雨上がりの港。
貨物船の汽笛、警笛が時折鳴り響き、タグボートが海面を走る音が時折聞こえる場所。
海からは少し離れているが、ここからなら港まで車で数分とかからない。
そんな港区の一角にある、寂れた廃工場・・・
中部地区のものづくりを支え続けていたであろうこの建物も、今は使う主を失って寂れていく一方であった。
‹ガッ『……コチラA地点、ザー… 異常ナシ』ガリッ›
あまり品質は良くなさそうなトランシーバーから、仲間の定時連絡が入る。
カチッ「こちらC地点、了解。コチラも異常無し、どーぞ」
金髪、青のスタジャン姿の、如何にもヤンチャですスタイルの彼はトランシーバーに返事を返してからふわあぁ〜…っと大アクビをした。
「あ〜…暇だぜ。
あっちなら兎も角、ココは港側でコッチから人なんか来るわきゃねーんだけどなぁ……」
「そうボヤくな。こんな事してるだけで時給1万払ってやるんだからな?楽な仕事だと思うがなぁ」
コチラは黒いスーツが似合わない、無理に着せられた感じの、如何にも悪役下っ端をまとめるサブリーダーなオッサンがタバコに火を付けながら若者をなだめる。
「つーても向うはお楽しみ中なんだろ?女が二人も居るんだから一回くらいは犯ってみてえぜ…」
もうひとり、獲物の金属バットを肩に担いだままヤンキー座りする赤のスタジャン、ボサボサ髪のオニイチャンが、守らなきゃならない場所の方向を見てボヤいた。
「ーー 残念だが、一人はオトコって話だぜ?」
「え?なに?そーなのか?そいつは……」
声の方に振り返ると、自分より少し背の低い、茶髪、長い三編み、革ジャンの青年が自身の背より長い棒を杖のように持ち、人懐っこそうな笑顔で立っている。
「………なんだ?ガキじゃねえか。ガキがこんなとこ……」
ーー ガスッ!
杖の先がヤンキー座りの男の顎をすくい上げ、倒れ込むと同時に、鳩尾に棒の先が深く食い込む。
「ぐえぇ…」
「なんだ、このガキいつの間…はばしゃ?!」
青のスカジャンにーちゃんの顔面に棒の先がメリ込み、同時に棒が足元を払い除け、頭からにーちゃんは倒れ込んで動かなくなる。
