
仔犬のすてっぷ
第22章 Played Fight a Waltz Steps
……そりゃまあ、王位継承権が十一番と低いとはいえ、仮にも一国の王子様だからねぇ……と、護衛兼世話役のラシード氏の日頃からの苦労を垣間見た蒼空は苦笑いしてカリームを見た。
「…そうして歩いてるとサンドロックが歩いてるようにも見えるかもな?」
「・・・流石に彼は連れて日本には入れませんけど…普段は三河湾の外洋の潜水艦の中に居ます。今日は偽装タンカーに入れて名古屋港に入ってますけど、彼の出番は多分ありませんよ」
「・・・・・・じ、冗談…だよな?」
「本気にしました?流石にそれは冗談…ですから
☆」
(コイツの冗談……冗談に聞こえないところが怖い・・・(汗))
石油王の息子だから、あるいは……なんてこともありそうなだけに、〈瓢箪から駒〉が起きてしまったら笑えない。
「…それでは、行きましょうか・・・」
「ああ・・・」
正門外にまず二人。
身軽な蒼空が一気に間合いを詰め、見た目は工場の作業員……だが、警棒を携えた男達へ攻撃する。
「……!敵襲ッ!」
そう叫びながら警棒を抜きに掛かる相手に、蒼空は更に間合いを詰めて正拳突きを放つ。
「…!」
かろうじて相手はソレを避けたが、まだ警棒は抜けていない。避けた先が丁度蒼空の脚技の間合いに入ったのを見逃さず、蒼空の右足が相手の抜き手にクリーンヒットし、弾かれた警棒が地面に転がった。
「…チイっ!」
警棒に構わず殴りかかる作業員の右ストレートを体を半歩近づけ間合いを詰めた蒼空は、そのままパンチを繰り出して伸びた右腕に素早く両腕を絡め、同時に足を払って投げ飛ばす。
ーー ガン!
半開きになっている重い門に叩きつけれ、作業員Aはそのまま動かなくなる。
「…敵襲ッ!敵は二人、正面から……ぅがぁ…」
トランシーバーに向かって襲撃を告げていた作業員Bは、後からたどり着いたカリームのシールドで顔面を殴り飛ばされ、ひっくり返ったところを蒼空に追撃され、溝尾に踵を減り込まれ動かなくなる。
「……久しぶりで腕が鳴ります…ね」
シャリイィン……と一本、大きく湾曲した特殊な形の刃渡り1メートル弱の刀身を抜き、左にシールドを構えたカリームが正面から来る敵に斬り掛かった。
