
仔犬のすてっぷ
第23章 仔犬達のワルツ1 カリームVS切り裂き魔
「…ケケッ!随分と重装備だな、オイ。
そんな格好でよくココまで来られたもんだ」
「余計なお世話です。貴方こそ、よく今まで警察に捕まらずにいられましたね。僕が今日、引導を渡して差し上げますよ」
「ケケッ……口の減らないガキだ。それでこそ後の楽しみが増えるってもんだ。
捕まえてから、清と二人でタップリ犯してやる、ヒヒッ♪」
ジリジリと間合いを詰めるように近寄ろうとするカリームに対して、小男はその分後退りして間合いを取ろうとする。
「貴方の名前…聞いておきましょうか?万が一の時の為に・・・」
「…万が一?そんなもんは、有り得ねえな。だが、犯した時に名前を呼びながら悶るのを見るのも悪くねえな。
俺は鬼頭ヤスだ、カリーム王子様…っ!」
ヤスが左手を振りかぶると同時に、カリームは盾を前にかざしながら一気に間合いを詰めるためにダッシュした。
「……遅え!」
二つの煌めきがカリームの盾に当たり、弾かれる。だが、ヤスはそんな事は最初から気にしていない。
突っ込んでくるカリームの左…盾側へ素早く移動するとそのまま走ってすり抜けて行く。
左側へ逃げられた為、右に手にしているショーテルを斬り付ける事が出来ないカリームは、盾をヤスに向け、体を右から左へ捻って、すり抜け際のヤスを狙いショーテルを横薙ぎに払う。
「……意外といい動きするじゃねえの?だが…」
ショーテルの薙ぎ払われた軌道をフワリとジャンプして避けたヤスは、すり抜け際に右手を振り下ろした。
ーー カカッ!
カリームの右の肩当てに、ダーツが二本突き刺さる。
「……!?
パロ・フィエロで出来たこれに刺せるなんて…」
パロ・フィエロ。砂漠地帯に自生する、“鉄の木”の一種であり、非常に硬い。
繊維密度が非常に高く、シロウトが普通にナイフで加工しようとすれば簡単に刃が欠けてしまう。
硬くて腐りにくく、鉄より軽いので古代の砂漠の民族はこの木を盾や鎧など防具の一部に使用してきた。
「なんだ?ただの木じゃねえな、それ。俺のダーツが貫通しねえとはな・・・刺さらねえなら……」
両腕をクロスさせ、力を込めて振り下ろしたヤスの両腕に、左右に一本ずつ刃が飛び出して固定された。
「切り裂いてやるぜ、にいちゃん♡」
