
仔犬のすてっぷ
第23章 仔犬達のワルツ1 カリームVS切り裂き魔
「・・・・・!!くそっ!」
素早い動きでカリームを翻弄する敵の動きに、彼は防御するのが精一杯だった。
ヤスが近寄れば、仕込み爪を次々と振り回し斬りつけてくる。
両腕の長いヤスの間合いは、体の小ささに反比例してとても広く、間合いを測りにくいのもカリームが苦戦している理由のひとつだった。
「ほれほれ♪ガードばっかりしていると、そのうち盾に穴が開いちまうぜ?イーッヒッヒ!」
ヤスの手数もとても多く、盾で防ぐ度にガリガリ削られ、木片が飛び散っていく・・・。
カリームの使っている盾は、もう長くは保たない事が見た目にも分かってしまうほど削られ、ボロボロになっていた。
「・・・仕方ありませんね……ラシード!寝龍刀を!」
そう言うと、カリームは盾をヤスに向けて投げつけた。
やけっぱちにも見える行動に一瞬驚くヤスだったが、投げられた盾をひらりと避けるとチャンスとばかりにカリームに飛び掛かる。
・・・が、その刹那。
ーー ひゅん……ガガスッ!
カリームとヤスの間に二本の刀身が飛んできて、アスファルトに突き刺さった。
「……おっと、危ねえ・・・って、なんじゃ、そりゃあ?!」
目の前に突き刺さった剣を見たヤスは、その奇抜な形状を見て思わず声を挙げた。
刃渡りは…先程とあまり変わっていないように見えるが、刀身の幅が全く違っていて、圧倒的に広い。先程までのショーテルはせいぜい15センチほどだったのに、今カリームが地面から抜いた二本は・・・その倍ほどありそうだ。
「昆布…?随分変わった形の剣だな…」
少なからずヤスにはそれに見えるらしい。確かに一言で説明するならそれが一番近いかもしれない。
「そんなコケオドシ、俺には通用しないぜぇ?」
「虚仮威しかどうかは……」
二本の剣を左右に展開し、そのあと火花が出る程叩き合わせてから構えたカリームの気配が変わる……。
「その身でじっくり味わって下さい!」
