
仔犬のすてっぷ
第27章 仔犬達のラストワルツ 蒼空VSトーマス
ーー ビシィッ!
ローキックがトーマスに当たった。
安全靴のように鉄芯が入った靴の蹴りである。普通なら悶絶して顔を歪めたりしてしまいそうな威力があるが、ソレでも彼は怯まない。
「……やっぱり、軽いな」
ローキックを出して動きが止まった蒼空の、その蹴り足をトーマスは勢い良くゴンッ!と蹴り上げた。
「……う、わあっ?!」
左足を蹴り上げられ、地面から軸足まで浮かされた蒼空の脇腹に、トーマスの重たい突き蹴りがドシュンッ!と入る。
「!?……げはあぁっ!!」
そのまま蹴り飛ばされた蒼空は、段ボールと木箱の山まで飛んで行きぼこ〜ん!と音を立てて突っ込んだ。
「・・・まさかとは思うが、よもや手加減してるんじゃねえだろうな?初めてやり合った時より攻撃が軽く感じるぞ?」
「・・・・・手加減?じ、冗談は顔だけにしやがれよオッサン……」
ボコボコっと段ボールを潰しながらヨロヨロと立ち上がると蒼空は再びファイティングポーズを取る。
「手を抜いてる訳じゃねえ。スピードをアンタに合わせた結果、力が上手く入らなくなった手打ちみたいになって、攻撃が軽くなっちまっただけだ。実際、スピードは負けてねえだろ?」
「……なるほど。手を抜いた訳じゃ無いならそれでいい……が」
ダダダッ!と体格に似合わないスピードで走り、再び間合いを詰めたトーマスに、蒼空は左ジャブを合わせその突進を止めようとしたが、しっかりガードしながら突っ込んでくる彼を止める事が出来ない。
ーー ドガアアッ!
左膝蹴りを突進してきたトーマスに置くように繰り出してその動きを止めに入るが、それすらしっかりガードされてしまい、そのままトーマスのショルダータックルを喰らった蒼空は、また段ボールの山の中に埋もれてしまった。
「……スピードを生かしてるつもりなら、今のは避けれないと話しにならんぜ?」
「……わ、分かってらあっ!クソっ!
こんな段ボールまみれのところ、アイツに見られたくねえんだよ……カッコ悪いじゃねえかっ!」
がぼがぼっ…と段ボールを撥ね退けて、ヨロヨロと蒼空は立ち上がる。
