
仔犬のすてっぷ
第27章 仔犬達のラストワルツ 蒼空VSトーマス
「……そんなんじゃ、ねえけどさ……」
「依頼内容は守秘義務があるんで今は話せねえが、護りたいもんや取り返したいもんがあるなら……自分の力で勝って取り返す事だな。
行動しなきゃ、なんにも手に入んない事はお前さんにも解るだろ?
・・・ついでに1つだけ教えてやる。
俺に勝てれば、お前は“本物の男”になれるぜ?」
それだけ言うと、トーマスはポケットから手を抜いてファイティングポーズを取った。
「…蒼空!僕も加勢します」
カリームはアキラの無事を確認すると、剣を取って立ち上がる。が、剣を構えたところで蒼空に止められてしまった。
「駄目だ、カリーム。悪いがアイツは俺が倒す。黙って見ていてくれ」
そう言うと、蒼空もファイティングポーズを取り、トーマスを見据えた。
す〜…っ・・・ふ〜〜…っ・・・
トーマスが、まだ間合いが離れている蒼空にもはっきり聞こえるほど、大きな呼吸をした……その後、ダンッ!と周りに響くほど激しい踏み込みで一気に蒼空との間合いを詰めてくる。
「…シ、シッッ!」
トーマスの左ジャブが2発、蒼空の顔面を狙う。
それを蒼空は、慌てる事無くしっかり見て、頭を左右に振って避け、同時に左ジャブを一発放つ。
パシッ!
右手のひらでそれを払ったトーマスは、蒼空のジャブの拳が戻るところを狙い、左のアッパーを彼の顎目掛けて打ち込む。
蒼空はそれをスウェーバックでかわしながら、さらに足一つ分を踏み込み、左でボディーブローを放った。
ーー がしんっ!
トーマスの脇腹に当たったものの、その程度では彼は動きを止めない。
ボディーブローを受けたまま、上半身をクルッと回転させ、拳を戻しきれていない蒼空の頭目掛けて右の拳を肘ごと振り抜く。
裏拳を右肘でガードした蒼空だったが、その威力で体が流されてしまう。
「……ちぃ!んなろっ!!」
流された勢いを左足に乗せて、グルンっ!と身体を捻って右足の回転脚をトーマスに打ち込むが、当たる寸前でバックステップされ、蒼空の蹴りは空を斬った。
「なかなか良い動きだが…」
外れた蹴り足を、勢いを乗せた地面に強制的に落とした蒼空は、落とした右脚を軸にしてさらにもう一回転し、トーマスの右脚、ふくらはぎ辺りへローキックを放つ。
