
仔犬のすてっぷ
第30章 共振
「…言い訳にしかならないでしょうけど、あなた達の事は確証が有って、大丈夫だと思ったから共振してもらったの。二度目の共振がどういうものなのか、身体で知ってもらうために・・・」
……二回目の、共振………。
確かに、あの不思議な感覚は、初めての時より早く効き目が切れてしまったし、しかも・・・
…‥‥身体が、重い。
しかも、ディープなキスを、蒼空が激しくしちゃったから………身体が、また・・・
熱い……。
この身体の火照り…早く何とか収めないと……。
・・・・・そう、頭の中で考えた時だった。
「きゃっ?!」「うわっ?!」
僕の後ろで小さな悲鳴がいくつか上がった。
振り向くと、森川店長と幸お姉ちゃんが倒れ込むところで……いや、それよりも。
「YAAA……HA!」
サラさんがいきなり僕に……飛び掛かってくる。
鋭い正拳突きが僕の顔面に当た………
パッシッン!
拳が当たる寸前でトーマスさんがソレを払い落とし、僕はとりあえず難を逃れた。
「……サラ?どうした?」
「YIYAAA…HAA!!」
人が変わったかのように激しいパンチやキックを次々に繰り出し、トーマスに襲い掛かるサラさんに、彼はひたすら避けたり払ったりしながら呼びかけ続けた。
「どうしたサラ?俺が分からんのか?!」
「・・・どうですか?お仲間に攻撃される気分は?」
声の主は霧夜だった。
すっかり束縛から開放され、涼し気な顔で僕等の方を見つめて斜めに構え、立っていた。
「・・・テメェ……サラに暗示をかけやがったな?!」
「その通りです。私も長い話を聞くのは得意じゃないんですよ。
したがって彼女に暗示をかけさせてもらいました。
早く話が終わるようにね………」
くくくくっと気味悪く笑いながら、霧夜は僕を見つめようとして……
「嬢ちゃん、坊主!絶対に奴の眼を見るな!見たらお終いだと思え!!」
トーマスの呼びかけが無かったら、奴の眼を見てしまっていたかもしれない。
