
仔犬のすてっぷ
第31章 激突する、LOVE IT
あ……
まだ……蒼空と精神が一部繋がってるの……?
「最初の時と同じで、一部の視覚は繋がったままになってるみたいだ。
つまり、今くらいの攻撃なら俺にだって何とかできるって・・・」
「 “姫” 専属の騎士(ナイト)がっ!こちらの世界でも私の邪魔をするかっ!」
…蒼空の台詞に被せるように霧夜が悔しそうに怒鳴り散らし……
ラビットの力を使っているのに今ひとつ物事が進まないのが気に入らないのかもしれない。
「アンタ…さっきからあっちの世界だの、こっちの世界だの姫だのって自己中な話してるがよぉ……」
蒼空は強敵に対しても物怖じせずに、いや、むしろ面倒くさそうに頭をガシガシと掻きながらため息をついた。
「愛するものを護るのは誰だって当たり前だろ?アンタだって愛するお金のために色々やってきてるんだろうし……。だから、今の俺の気持ち…アンタにだって解るはずだ」
そう言うと蒼空は霧夜を今までにない表情でギリッ……と睨みつけた。
「・・・優希にちょっかい出したら…………マジで殺す」
「フフフ…ハーッハッハッハァ!コイツは傑作だ!マトモに私と戦う術も持たない三下が何言っ・・・」
ーー ゴッ!
大袈裟にジェスチャーをかましながら高らかに笑う霧夜が、突然眼の前に移動してきた蒼空に見事に殴られて地面に転がった。
「……ん…なに?」
ひゅ〜♬
それを見ていたトーマスが思わず口笛を鳴らす。
一部始終を見ていた僕は、彼の動きを目で追うことは出来たけど…それは “LOVE IT” の力があるから見えていただけで……
リアクションの無い森川店長と、今戦っているトーマス以外には、突然蒼空が霧夜の前に現れて奴を殴ったようにしか見えなかったに違い無かった。
「んな?!あれ?!」
殴られた霧夜も驚いたようだけど、それより驚いていたのは殴った当人だ。
「・・・俺、今……」
思わず自分の両手をじっと見つめて蒼空が呟いた。
「・・・どうやって移動した…んだ?」
