
仔犬のすてっぷ
第31章 激突する、LOVE IT
「……説明しましょう☆」
“博士” という立場上、この上ない出番が来た相田博士は瞳を爛々と輝かせ口を開く。
「長い話が苦手な君に、簡素な説明をしましょう。
今のは君が霧夜氏に優希君を傷つけられる事に怒りを顕にした結果、発動したラビットの力よ。
愛の力により発動するラビットの力で一番発現しやすいもので、相手をぶん殴ってやりたい衝動に呼応した力が一気に移動エネルギーへ変換され、具現化したものね。
今までもそれなりに発現はしていたから普通の人よりも早い動きは出来ていたけれど、今のはそれよりも沢山の愛のエネルギーを一度につぎ込む事で出来た芸当ってわけ。
……あえて技名を言うなら
〈ラブ・テレポート〉ってところかしら」
「ら、らぶ……」
「テレポート…?」
「いいんじゃねえか?ちょーのーりょくらしくって。さしずめ俺と優希の愛の力なんだから、技の名前はオーユーティだ」
「…オーユーティー?なに、それ?」
蒼空はこのネーミングに落ち度がある事に全く気が付いていないようだ(汗)
「俺のの、O、優希の、U、テレポートの、T」
「アウト!」
「なっ、なにィ?!なんでアウト??」
「思いつきで行く割にちゃんと略が英単語になっているところはすごいと思うけども。
“OU T” って・・・ “駄目” だろ? 」
少し間が開いて、ようやく僕が言った意味が分かった蒼空は、ぽん☆と手を叩いた。
「…ああ!アウトはダメって意味だったなあ、なるほどなるほど★……ってそれじゃあ、駄目だあ〜!縁起、ワリイ!!」
「・・・わ、私はこんなおバカにしてやられたってのか?!
しかも、姫も含めて…何だ、この余裕は?!」
不意を突かれて殴られたのが効いたのか、この会話に脱力して力が入らないのか(苦笑)地面に転がった霧夜は腕を地面に着いたままぷるぷると身体を震わせている。
「……まあ、そこは俺も思うトコロだけどよぉ……それがアイツらの良いところでもある、とも思ってるぜ?」
色々諦めているのか、トーマスが苦笑いしながら霧夜に話しかける。
「ああいう奴は強いぜ?なんでも自分のペースに持ち込んで相手のリズムを狂わせちまうからな」
