
仔犬のすてっぷ
第31章 激突する、LOVE IT
………こ、ことわりって・・・
ち、ちょっとお!?
幸お姉ちゃんに抱き抱えられている僕の顎を、トーマスが優しく…だけど強引にくいっ!と自分の方へ向けると、そのまま唇を重ねてきた。
「んなぁ…ん……んんっ?!……ん〜…!」
「な、なっ?!」
「きゃあぁ?!」
「へっ?!」
「わ、わわわっ?!」
森川店長、幸お姉ちゃん、アキラ、潤はそれぞれが驚きの声を上げ、カリームは、顔を真っ赤っ赤にして絶句した。
そして、このひとは・・・・・
「んなあ?!・・・・・てっ…テメエエェ!!」
当然、というか当たり前、というか。
怒りを体中で表現しながら叫んだ。
「・・・・・・・・・・はぁ……」
僕の方はといえば……
トーマスのキスに、酔いそうになっていた。
(………な…何だろう…この感じ・・・・・・・何処か…なつか…しい??)
とにかく、不本意なキスだったのに……
めちゃくちゃ、上手…だった……。
その一言に尽きる。
絡める舌の動きも、強引だったのに…中では控え目なのに、気がつけば自分から絡まりに行ってしまうような…
これが大人のキスってやつなんだろうか?
「……あっ…?」
トーマスの唇が離れた時に、僕は思わず声を出してしまう程……それは甘美なモノだったんだ。
神経増幅剤が効いていたから……だけじゃない、甘い、誘惑されてしまう、キス。
「悪いな。許・・・」
ーー ぱしぃん!
言葉より、先に僕の手が飛んでいた。
怒りに任せ、蹴るつもりで脚を上げた蒼空の足首はしっかり掴んでいるのに、僕の平手打ちは止められなかったらしい。
「……ズルいな。未来予測でビンタするたぁ、やるね、嬢ちゃん♡」
叩かれた頬をさすりながら、トーマスが僕にウインクを投げかけた。
いや・・・今のは……
普通にビンタしただけ。
……それを受けたのは、キスのお詫びだったの…かな?
