
仔犬のすてっぷ
第32章 決着
「…そして、これはっ!」
一旦ピタリと動きを止めた後、大きく息を吸い込んだトーマスからずどん!と闘気の圧力が上がった。
「この俺をこの世界で5年も待たせた挙げ句、上から目線で舐め腐りやがった礼だ!受け取りやがれっ!」
どかばきべきげしごすぐしゃどすがんぐしゃごりぐにゃどごがしぃずどがあああん!!!
「………なんだかんだ言って…一番腹に据えかねていたのはオッチャンだったんだなあぁ…」
全てのうっぷんを晴らすような怒涛のトーマスの攻撃を見た蒼空が、しみじみと呟いた。
・・・・・いや、あれは放っておいたら霧夜が死んじゃうんじゃないかい?(大汗)
「…つーか、5年も待ったって…どーいうことなんだ?」
それは僕も聞いていないから詳しくは分からないんだけど…たぶん、
「時間と時空を移動してきたは良いけど、霧夜が行動するまでそのくらいのタイムラグ…時間のズレがあったのかもしんないね」
時間、時空移動の精度がどのくらいなのかは知らないけど、そのくらいはなんとなく想像は出来る。
「ご明察☆彼からそんな話をされた時は疑ったけど……色々話を聞いているうちに、彼が別世界の人間だって分かったわ。
まあ、流石に元々不確定な力ですもの。そこまで都合良くは行かなかったみたいね」
相田博士が喜々として霧夜をタコ殴りにするトーマスを見ながら解説してくれた。
「……これで…彼はこの世界から立ち去っちゃうんだよね…貴重な研究資料なのに…もったいないわぁ」
・・・そっか……
トーマスは霧夜の計画を阻止したんだから、もう、この世界に用はなくなっちゃうんだよな…
「…あら?彼に未練でも出来た?そんなにあのキスが良かったのかしら?」
少し面白そうに僕にそんな事を言ってのける、貴方こそ…なんか、研究対象がいなくなるってだけじゃない、違う感情が有ったみたいに感じるんですが?
…とは口には出さなかったけど、ラビットの力を使わなくてもそれを感じ取ったのか、博士は少しだけ僕に女性の顔で苦笑いしてみせた。
