
仔犬のすてっぷ
第32章 決着
「蒼空……本当に奇跡だよ?」
僕は、彼の胸元のそれを掴み、蒼空の顔の前に差し出した。
「……え?あ、あれ??俺……弾、喰らって…無い?!」
彼の胸元にあった、シロナガスクジラのペンダント型キーホルダー……。
それに、霧夜が撃った拳銃の弾がめり込み、そこに存在していたんだ。
「・・・はは、はははは………なんじゃ、そりゃあ。これじゃあ…俺って、カッコ悪いじゃ…」
「そらああああぁっ!」
僕は、思いっきり、力いっぱい。
蒼空の頭をぎゅううっ!と抱きしめた。
「ゆう…むぐ!ふぐふぐむぐう!」
「……良かった……ほんとうに、良かった・・・
本当に・・・死んじゃうんじゃないかって……」
「むぐぅ!ムグムグもぐ、ムグううっ!(死ぬっ本当に、死ぬううっ!)」
……あ。いけない。
「ご、ごめええん!苦しかった?」
ぷはあああっ!と、おもいっきり息をして蒼空が目を白黒させている。
そんな彼を見たら…また抱きしめたくなって。
もう一回ハグしようとしたところで蒼空がストップを掛けた。
彼を守ってくれたお守り…キーホルダーを僕に見せて、蒼空が苦笑いする。
「…折角お前が買ってくれたのに……コレじゃ、使い物にならないな…鍵も、キーホルダーも、お釈迦になっちまった」
「…大丈夫。鍵もキーホルダーも、また手に入れればいいだけさ」
「んじゃあ、またナガ◑マリゾート、行くか?」
「もちろん!」
「…お取り込み中すまないが……」
いつの間にか僕達の直ぐ側に、トーマスがサラを肩で支えながら立っていて。
そうだった。
サラさんも撃たれたんだった。
喜んでる場合じゃなかった。
「…一応大丈夫だ。弾は体から抜けてるし、奇跡的に浅い場所を通過した感じだ。だが、これで警察が来る前にトンズラすることは俺達は出来なくなった」
……え?
「俺とサラはここに残る。でないと病院へ行けなくなるからな」
