
仔犬のすてっぷ
第32章 決着
「・・・優希…そんな…顔、すんな……」
蒼空の右手が僕の頬を優しく撫でる・・・。
…こんな…こんな結末が待っていたなんて……
こんなの……誰も望んじゃいないはず…なのに。
「蒼空…しっかりしてよ・・・僕を慰めてくれるんじゃ、なかったの?」
「わりぃ……ソレは…また、そのうち…に…な。
眠く……なって………」
「そっ…蒼空っ!しっかりしてえぇっ!」
ダメだ!寝ちゃだめだ・・・
…そうだ!幸お姉ちゃんは?!
お姉ちゃんの治癒能力なら!きっと治せ……
・・・・・・・・・ん?!あぅん?
突然僕は、お尻の右側に妙な違和感を感じた。
さわさわと、器用に万遍なく、元気に動き回り……僕が感じそうな場所を撫で回す。
「はぅん…ぁあぁ…♡……っふん?」
ぞくぞくぞくっ!と体中が栗立ち…
薬の効果のせいか、更に感じてしまった僕は思わず声を出してしまった。
・・・・・君って奴は……
こんな時まで、欲望に忠実で…って?
ちょっと、まて。
「・・・何してるの?蒼空」
死にかけてる人間が、本当にこんな事するか?
亀仙人や冴羽某(なにがし)ならともかく……
「いや……死ぬ前に……撫で納(おさめ)して…おこうかと……」
僕は、銃弾が当たった場所を探し…蒼空のデニムシャツの胸元にそれを発見したが、血が出ている様子はない。
………これは……
すぐに僕は彼の胸元を確認するために、デニムシャツの胸元をがばっ!とひん剥いた。
「……血が出て…そんなモノ…見ても……」
はは…はははははは……
嘘みたいだ…こんな事……。
こんな事が、現実に起こるなんて・・・。
