
仔犬のすてっぷ
第7章 過去と今と…
「それより、今夜は早いんじゃない?いつもなら、まだ、仕事中だろ?」
蒼空の働くボーイズ・バーは、夜からの営業で、7時から朝の4時頃までが定番だ。
お客様の入りで時間は変わるけど、同伴の依頼が入らなければ、基本的にはお店での接客となり、8時間勤務となる。
「それがさあ〜…俺は今日、同伴の予約が入ってたんだけど……あのオッサン、緊急議会が入ってきて、来れなくなったんだと。参るよな〜…
3日分、料金払ってくれたし、オーナーはほくほくで、俺も割り増しが貰えるから、それ自体は文句は無いんだけどよ〜」
はぁ〜…と、深いため息をついて蒼空は愚痴をこぼす。
「まる3日だぜ?そんなに休んだら、やる事無くてキッついぜ〜…」
つまり、蒼空は3日分、お得意様の予約で同伴扱い登録だったが、キャンセルされたのにその料金は頂いちゃってるので、
蒼空はお店に出ると同時間でのダブルワーク扱いになってしまう。
労働基準法やら色々な縛りがあるからまずい事になるため、店の仕事から外されている…という事らしい。
「……ヒマなら、明日、どこか行こうか?僕も、2日休みになるし」
遅番明けで次の日から早番になる場合、たいてい睡眠時間を犠牲にしなきゃならないが(遅番は夕方4時から夜中0時までの勤務だけど、実際は閉店後に様々な作業があるので、終わるのは早くても深夜1時、普通は深夜2時頃終わる事になる。
早番は朝8時には出勤となるので、帰宅後や出勤時間を考慮すると、3時間位しか睡眠出来ない)
働き方改革のおかげもあって、夜勤明けは大抵2日の休みがもらえるようになった。
「お?アンタも休みなんだ?そいつは良いな♪」
不機嫌だった蒼空の顔が、一気に晴れ渡る晴天の笑顔に変った。
(……ホント、子供みたいに笑うよね〜)
そんな彼の顔は、僕の心をホッコリとさせてくれる。
今、僕は、仕事もプライベートも、充実していて幸せなのかもしれない、と感じていた・・・。
