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仔犬のすてっぷ

第8章 お出かけ♪


「あ、そうそう。せっかくだから…」

 僕らは近くのおみやげコーナーに立ち寄った。目的は、ひとつ。


「ああ、あったあった」
「え?何?キーホルダー??」

僕が手に取ったのは、シロナガスクジラを模したキーホルダー…では無く。


「違うよ。それじゃなくて、ネックレスタイプのキーケース。限定品なんだ」

 白銀に輝くシロナガスクジラの中に鍵を収納出来る物で、元は子供用に、カラータイプのプラスチック製が販売された。
 人気があったため、大人向きの小洒落たデザインで、元の物より小型の、金属製の物が数量限定で販売されていて……


「…あんま、キーケースには見えねえな」

 蒼空がそれを手にとって、裏や表を交互に見比べる。


「だから、いいんじゃん」

値段はちょっと、普通の物の何倍もして張るけれど……


「初の長□記念に買ってあげるよ」

「え〜〜…?俺、子供じゃねえから……鍵は、このキーケースがあるし」

 蒼空が取り出したのは、有名ブランドのキーケース。小型で使い勝手は良さそう。


「普通の鍵は、そっち使いなよ。このキーケースは………」

僕は、ズボンのポケットからキーホルダーを取り出し、その中の1つを外す。
そう、この鍵は・・・。


 その鍵を、買ったばかりのシロナガスクジラのキーケースに取付け、カチン☆と音がするまで閉める。



「・・・どうですか?お客様。こちら、大変お値打ちとなっておりますが?」

そう言いながら、営業スマイルで僕は彼にそれを差し出す。


 僕の部屋の合鍵付きキーケース。



 今まで、一人暮らしだった。


 部屋に戻っても、だれも迎えてはくれないのは、当たり前だと、普通に思ってた。

 だけど、昨夜部屋に戻った時
そこには彼がいて。
寝ている蒼空の顔を見た時・・・


心からほっとしている自分に気が付いた。


 不法侵入だと言えばそれまでだけど(苦笑)他人のはずの彼に、安心感を感じるなんて、昔の自分からは想像出来ない。


それほど、今の僕にとって
蒼空の存在はとても大きくなっていて。


(もう、家族と変わらない…よね?だったら……)

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