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仔犬のすてっぷ

第8章 お出かけ♪




「……優希、怒ると怖いな…」

手洗いに行き、ずぶ濡れになったTシャツとジーパンをよく絞ってからロッカーで合流した蒼空が、呟くように溢した。


「ボケにしたって、鼻血が出てる時点でアウトだよっ!」

 着替えを終えた僕は、ロッカーを閉めてからため息をつく。


「いいじゃんか〜。そんだけ優希を愛してるって事なんだから♡」

 まったくこりてない様子の蒼空は、鼻歌交じりで絞ってシワシワのTシャツをパンパン払ってシワを伸ばし、それに再び袖を通す。

「だからあ、僕はオトコなんだから………な、なんだよ?」

 濡れたシャツを伸ばしながら、蒼空は僕の胸元に顔を近づけじ〜〜っとこちらを見る。


「アンダーウェア着る?普通、プールじゃ着ないだろ?」

 日焼け止め、UVカット機能がある、黒のアンダーウェアを、蒼空は恨めしそうに見つめている。


「ここは全部海水のプールだからね。日焼けしやすいし、僕は日焼けすると酷くなるから」
「んなもん、日焼け止めオイル塗れば…」

「ココはオイル塗ったままの遊泳は禁止なんだよ」

…水に溶けにくく、落ちにくいものは良かったとは憶えているけど、どのみち僕は身体の肌は見えないように隠している。



……見られたくない疵がまだ残っているから……。



「まあ、その方が楽しみが残せて良いか♪」
「・・・何の、楽しみ、かなぁ?」
「わ、わあっ?!じ、じ、じょおだんだからあっ!」

 僕が区切り区切り話すと怖い事を、彼はすでに身を持って経験している。
軽蔑の眼差しで蒼空を見つめると、彼はわたわたしながら慌てて後退った。


「…な〜んて♪大丈夫、怒ってないよ☆」

あははっと笑い、敵意がない事を伝えるように、にっこりと笑顔を見せる。


「そんな事より、コレ。付けてあげる」

僕はさっき買ったシロナガスクジラのキーケースを取出した。


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