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仔犬のすてっぷ

第10章 JAZZと夢と、その裏に



「大丈夫だよ。大丈夫。蒼空くんなら、きっとあなたを受け止めてくれる」


「そんな事…分からないでしょう?アイツは僕を好きだって言ったけど、ただの体目的かもしれないって、考えちゃうんだ。
そんな自分を疑る奴を、それでも好きだなんて言ってくれるのか、判らないんだよ。
それに……オトコが男に身体を差し出す…そんな勇気、僕には・・・」

ポロポロと、僕の目から涙が溢れ出して、
下に敷いてあるゴザにポトポトと落ちる。


「言ったでしょ?蒼空くんは、キミが大好きなんだよ?もしかしたら、私が先輩を想っていた、あの頃の私より・・・
あなた達の間に何があって、どうして蒼空くんが優希くんの事を好きになったのかは、私には分からないけど…
でも、私には解るの。
だって……私と彼は同類だもの。
きっと、彼は性別を超えてあなたの “中の心” を真面目に見てくれているわ」

そう言うと、彼女はハンカチを僕に差し出してくれた。


「僕の、中の、こころ……」

「そうよ?だって、同性を好きになるのは、異性を好きになることよりずっと大変で、凄い奇跡なんだから♡
一度、一歩でいいから彼に歩み寄ってみて?
焦らず、ゆっくり……
受け止めてもらえる距離まで……」

「ゆい〜…おまたせー!」
「優希ぃー!今のうちにトイレ済ませといた方が……」

出掛けていた二人が戻ってきた。
結さんは…まだ何か言いたそうだったけれど、



「・・・頑張って、頑張らないでね☆」



そう言いながら優しく微笑むと、小走りでお手洗いの方へ向かって行った。


気がつけば、まだ若干明るい夜空に
星がいくつか輝き始めていた・・・。



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