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ぼんやりお姉さんと狼少年

第25章 彼女と私の怒り



「ここがなにか知らず子供によく悪戯されるんでな……花を?」

「……今はお盆ですから」


仕方なく。
厳密に彼らにそういう習慣があるのかは分からなかったが、供牙様の所では今朝は確かお線香の香りがした。


「……申し訳ないがそれは引き取ってくれないか。 見たところ、お前さんはまだ独身だろう?」


はあ、私は老人に曖昧な返事を返して軽く首を傾げた。
独身がなにか関係あるのだろうか。


「ここが忌み嫌われる理由は色々あるんだが、関わると縁遠くなるとも云われている。 だので私みたいな年寄り以外は滅多に近寄らんのだよ。 ホレ、特にそこに小さな墓があるだろう?」


小さな墓。 おそらく今足元にある、岩を積んだだけのものだ。


「気立ては良かったといわれておるが、大層不器量な娘だったらしくてな。 だが始祖様の子は、ずっとその者を傍に置いていたそうだ。 そのせいもあり、その女には結局一生縁が無かったとか」


娘……適齢期の女性をずっと?

『大層不器量な娘』

その失礼な物言いには覚えがある。

『お前と違ってな』
『あんな大きくて、不細工な』


「……二人は夫婦だったのではないですか?」


一応、そう訊いてみる。


「それは無い。 始祖の子には正妻をはじめ7人の妻がいたと聞いている。 その娘は妻でもない、ただの彼の世話係だったようだ」


生涯未婚。

予想とは少し違ったようだ。
もしかして最初の長身の女性が私のご先祖様なのかも、と思ったのだけど。

なんだか気の毒な話であるが、それで、関わるものは縁遠くなるなんて言い伝えがあるのだろうか。

それに、昔はこんな所でも、結婚するのには他に家柄なども関係したのかもしれない。



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