ぼんやりお姉さんと狼少年
第5章 この後掃除が大変でした
違わない。
多分それは琥牙が正しい。
彼は一番大事なものを大事にしてただけ。
これじゃ子供みたいなのは私の方だ。
一緒にいたこれまで。
琥牙が一生懸命こちらの世界に、私に合わせてくれてたのを知ってた。
なのに決めつけて諦めて目を背けてたのは私。
それでも、どう言えばいいのか分からず私は彼から視線を逸らしていた。
「それにそういう事言うなら昨晩、真弥がおれに発情してたの知ってるよ」
「…………!」
そうだ、琥牙は高精度ストーカー。
しっかり気付かれてた事実に、顔どころか全身火を吹きそうでそこからダッシュで逃げたくなった。
そうしなかったのは急に琥牙に手を引かれたせいだ。
「琥……牙っ……痛い、よ。 どこ行くの?」
「家に帰る」
「…………?」
私の手を握ったままの彼がずんずん早足で歩いてく。
えっと。
これってもしかして帰って致しちゃうコース?
ても以前に出来ないって言ってたし、なんなの?
「……待って」
「待たない」
「私、まだ終わってないし」
生理が。
彼も知ってるだろうし。
だが琥牙は歩を緩めなかった。
マンションに着いて鍵を開けて部屋に入ってからやっと、彼が私に向き直った。
「い、一体……」
息が上がってぜいぜいいってる私を琥牙が静かに見詰めてくる。
「悩ませたの、おれも悪いと思う。 あとこの際言うと。 前から真弥の態度に違和感あったけど、おれは真弥とそう変わんない。今年25歳だよこれでも」
「へ!?」
「だからそんな子供じゃない。 死んだ姉さんがどうとかアイツ……高遠やらが言ってたみたいな弟ってのは違うから」