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ぼんやりお姉さんと狼少年

第31章 ゴールデン・ドーン



「ふうん?……ああ、そいやさ。 朱璃様が言ってたけど琥牙さんって、小さい時は割と冷めた子供だったんだってさ」


いやだから、聞きたくないんだってば。

とはいえその理由を話すのも面倒で、私は彼の話すがままにさせておく事にした。


「変わったのは彼のお姉さん? が亡くなってかららしいよ。 弟の雪牙君の事とかも、いきなり可愛がりだしたんだってさ。 それこそ伯斗さんから奪う位の勢いでって」

「……だから雪牙くんがあんなに懐いてるのね」


その頃に牙汪が現れたのだろうか。
そんな事をぼんやり思った。


「俺らが元々そうっだってっても、特にあの人が桜井さんにヤキモチとかが酷いのはそういう」

「二ノ宮くん、話題変えない? 実は私たち」

「別れ」
「あっ、そこ崖」
「痛っ!? …ひゃあッ!!」


二ノ宮くんが話しかけるのと同時。
目の前の枝で額をゴチンと打ち、仰け反って前に出た私の片足がズルッと斜面から滑り落ちた。


「桜─────────!!」


咄嗟に測ったほぼ直滑降の崖は目視でおよそ四メートル。

……こりゃ捻挫で済むかな?

目をかたくつむってそんな事を思いつきつつ、体に受けた衝撃は一瞬で、思った程でもなかった。


「………?」



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