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ぼんやりお姉さんと狼少年

第32章 桜井家の最終兵器


***
女子高生二人の訪問で突然賑やかしくなるダイニング。

勢いよく内側に開かれたドアの後ろ側に立って彼女らを迎えたらしい琥牙は、遠慮なしにドカドカ入ってきた私の妹たちに面食らっているようだった。


「お姉ちゃん、久しぶり! なんか週末お兄ちゃんとみんなで出掛けるって、会えるの珍しくて楽しみにしてたのに。 せめて遊びにだけでも行きたいって、美緒が」

「そりゃあそうなんだけど。 明日でもいいって私言ったんだよ。 でもなんか、お姉ちゃん」


お喋りな方の莉緒が私に抱きつかんばかりの勢いで話してくる。
同時にキョロキョロとマンションの様子を見回し、挨拶のタイミングを失っていた琥牙にふと目をとめた。


「え? あれっ、彼氏ってこの人? ずいぶん若…待ってハーフ? 大学生? ヤバい超イケメン!?」


両手を口に当ててぶわっと暴走しかける彼女に美緒が慌てて声をかけた。


「り、莉緒。 あんたちょっとまた───────」



***
「お姉ちゃんごめんね。 だってお姉ちゃんの彼氏っていうから、また随分歳上かと思っちゃって、油断してたんだよ」

「いいけど……浩二ってば何も言ってなかったのね」


美緒と話しつつ、横目でちらりと二人の方向を見ると完全に莉緒の目がハートマークになっている。

二人の顔は似てるけど、髪を肩まで下ろしてる方が比較的しっかりものの美緒。
悪い子たちでは決してないが二卵性双生児の、妹の莉緒の方が何しろ昔から、滅茶苦茶惚れっぽいのだ。


「うん。 なんかお姉ちゃんが面白い兄弟と付き合ってるから会わせたいとか、そんなことしか知らない」



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