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ぼんやりお姉さんと狼少年

第42章 私たちの牙 前編


供牙様は言っていた。
『効力を発揮するのは、同じくその恩恵のある我らの里に限ろう』
そんな特有の力を秘めた狼の里。



───────あっ。 と声をあげそうになった。

なにか忘れていたと、こないだからモヤモヤしてたその正体。

それが分かった。



「伯斗さん。 前に、卓さんがいくら強くても琥牙には敵わない。 そう言ってましたね」


私はてっきり、人狼は全て同じようなものだと思っていた。


「はい。 琥牙様の霊力は生まれ持って桁違いのはずですから」


ベンチから立ち上がり、腕を組んで逡巡する私を伯斗さんが訝しげに見ている。


『純粋な撃ち合いなら、琥牙さんとどっちが勝つんだろ』
二ノ宮くんがそう言っていた。

人狼同士は分かり合えている。 そう思い込んでいたのは、私の勝手な想像で。
そしておそらく、慎重に準備を進めていた卓さんも。


「真弥どの。 なにか考えがおありで?」

「はい。 ただ……」


琥牙。
本来的には、彼が必要なんだろう。

…………今からマンションに戻る?


『おれたちとは違う』

美緒たちが遊びに来ていたときから、そう言ってどこか、琥牙は二ノ宮くんと線を引いていた。
先ほども、他人ごとのように接していた彼が進んで来るとは思えない。

事実、助けて欲しいという私の依頼も断られた。



「里に行きましょう。 二ノ宮くんはそこへ向かっているはずです」


それなら仕方が無い。
これに関しては、考えたって仕様がないもの。


「里ですか。 真弥どのがそう仰いますなら」


意外にも即答して頷いてくれた伯斗さんだった。


まあ、いいや。 なるようになるし。
私が実はいつものようにこんな風に考えてるなんて、伯斗さんは知らないんだろうけれど。





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