ぼんやりお姉さんと狼少年
第47章 番外編 - 琥牙くん、上京
***
警戒心が無い。
自分に対するおぼろげな好意が伝わる。
とはいえ、こちらに発情してるわけではない。
ファミリーレストランでご飯をご馳走になりながら、おれは相手を観察していた。
むしろ話し口調から、明らかに子供扱いされてるのが分かる。
単に子供が好きなのかな。
それならそういうことにしておこう、なぜだかそう思った。
「都会の子って毎日大変だよねえ。 電車通学なんて。 危ないから気を付けるんだよ」
自分をはるか棚に上げて、そんなことを言う。
「ね、お酒飲んでいい?」
「うん?」
「ありがと。 あ、私ばっかりごめんね。 仕事上がりのビールって、至福なんだよね!」
おれは子供設定じゃないのかな?
空腹に任せてがつがつ食べてるのをニコニコしながら、こちらを見ている。
それで、自分のお皿が気になるのかな。おれはそう思い当たった。
「ポテトフライ要る?」
「要らない、太るし!」
「?」
鈍いだけかと思うと、YesNoがハッキリしてる。
子供でも下に見ない。
それにしても。
綺麗な人だと思う。
周りの人間と較べても抜きん出てスタイルが良くて、まずそこに目がいくけど。
最初印象的に感じた目とか、細くて長い指とか小さな白い耳とか、一つ一つのパーツ。
そんな彼女独自の特徴を無意識に探し当てては目が吸い付いてしまう。
大っきい目が笑うと無くなって、大体彼女はいつも楽しそうだ。
自分より背の高いこの人が、むしろかわいいと感じた。