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ぼんやりお姉さんと狼少年

第11章 月色の獣 - 序



「変わった夢だったな」


けれどそれにしては妙にリアルだった気がする。

どこか不思議な感じだった。

……懐かしい様な切ない様な。



───────コンコン

バルコニーのガラスを軽く叩く音が聴こえてカーテンを開けると琥牙と入れ違いに窓の隙間から珀斗さんの顔(鼻)が見える。


「おはようございます。 琥牙ってば今さっき出掛けたんですよ」

「ああ、そうでしたか。 近くまで寄ったので様子を見に来たんですよ。 いやあ、今日も暑くなりそうですね。 緑の多いうちの里はこれ程でもないんですが」


珀斗さん専用のお皿に冷たい水を入れてあげると美味しそうにそれを口にする。

人になれない珀斗さんは、琥牙や雪牙よりも口に入れるものは動物のそれに近い。
外見も銀灰色の毛並みもよく図鑑で見る、いかにも狼といった風情。

喉を潤して落ち着いた様子の珀斗さんにふと訊いてみる。


「琥牙様のお父上、ですか?」

「はい。 どんなだったのかなって思いまして。 毛の色とかはやはり白い感じ?」


そうするとすぐに返答があった。


「基本的に人狼は白ですね。 雪牙様もそうですし」

「座ったらこれ位あります?」


私の胸の下辺りに手をやると大体それ位です。 と珀斗さんが頷いた。


「亡き父上に限らず歴代の人狼のリーダーは皆そうです。 美しく、威風堂々としております。 琥牙様からお聞きになりました?」

「そ、そうですね」


そんな訳じゃないけど。


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