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双龍の嫁

第2章 風龍


それに通りがかって気付いた鳥も、またわたしたちの姿をみつけた他の鳥も。
あっという間にわたしの周囲を鳥たちが覆い尽くしました。


「ああ、助かった。 この暑さじゃ木陰なども役に立たない」

「嫁御のそばは常春のような心地好さだ」


口々にそう言いながら彼らはわたしの周りを飛び回ります。
彼らはイヌワシのようには高く飛べない様子でした。

わたしの体はどうやら夫と同じに、傍に寄るものも過ごしやすい心地にすることにも出来るようです。

そんな自分の変化に戸惑いつつも、どこかそれを嬉しがっている自らの心持ちに首を傾げました。


「そうだ。 嫁御が村に何かあったのかと訊いてきたが、なにか知っているか」

「こう暑くっちゃ畑の麦も実る前に台無しだ」

「しかしわしらは、人里でなければ餌にはありつけないからな」

「そういえば、南の方へ行っていた鴉が言っていた。 あの辺ではこの頃しょっちゅう激しいいさかいが聞こえると」

「南というと、火の龍の住処のある」


甲高い声で交わし合う彼らの言葉に注意深く耳を傾ければ、その内容は、火の龍に嫁いだ先の様子がどうもおかしいということでした。

火龍とその新妻、ふたりの間でなにか不和が起こったのではないかと。



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