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月光蜜浴

第1章 神と結ぶ泉

淡い金色に染まる泉に浮かぶ白羅(はくら)の花。月に魅入られた少年がこの泉から千年見続けた末に、白く美しい妖艶な香りのする花に変わったという。夏の夜にだけ、この花は現に姿をみせる。



なぜ、『夏の夜』なのだろう。少女は絹のように滑らかで美しく長い髪を洗いながら、そんなことをぼんやりと考える。


少女の住む里は代々月の女神を信仰している。そのため、髪は切ってはならないし、身体も常に清めておかなければならない。女人だけがこの泉を使うことを許され、禊ぎに訪れるのだ。



今宵は少女が最後だから、いつもより長くいられる。



「ふぅ、そろそろ上がろうかしら」




泉から上がろうとした時、背後で気配がした。ここには自分以外誰もいないはず――おそるおそる振り返ると、黒曜石のように昏い神秘的な瞳の少年がたたずんでいた。


濡れた白い衣は濡れて肌に張りつき、目に毒だ。なんだか、見てはいけないものをみてしまったような。いとせず胸の鼓動が速くなる。




――だって、今私は何も身に纏っていないのだから。



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