冬のニオイ
第2章 Flashback
【翔side】
「ごめん、しばらく会いたくない」
捨て台詞のように言った俺にあの人は何も言い返さない。
そのまま静かに泣き出した智君を一人置き去りにして、俺は振り向きもせずに店を出た。
それきり二度と会えなくなるなんて、思いもしないで。
何度も、何度も連絡を取ろうとして。
でも、会ったらまた酷い言葉を投げつけて傷つけるんじゃないかと怖くて、どうしても連絡出来なかった。
あの人が俺を裏切ったなんて、そんなことを信じたりするもんか。
そう思う一方で、なら、どうして俺に隠していたのかと疑念が湧いてしまう。
やましい事があったからじゃないの?
心は裏切っていなくても、身体は違う男に抱かれたの?
それならそれで、何がどうしてそうなったんだよ。
もしも本当に智君が誰かと関係を持っていたとしても、簡単にそんなことをする人じゃない。
何か事情があった筈なんだ。
それを話してくれたら許せるのに。
最後まで何も言わないあの人に腹が立って、言葉がキツくなるのを止められなかった。
意地になって吐かせようとした。
真実を伝えることも嘘を言うこともしないで黙ってるなんて卑怯だ。
じゃぁ俺達が二人でひっそりと紡いできた時間は?
一生、ずっと一緒にいるって約束は何だったんだよ!!
そう思ってた俺は、何て上から目線で傲慢で、自分のことばかりだったんだろう。
あの人は騙されて酒を飲んだだけだった。
全部俺の誤解だったってわかったのは、最後に会ってから半年程も経ってから。
謝りたくて、やり直したくて。
ようやく意を決して電話してみたけど、俺が知ってる智君の携帯電話はもう繋がらなくなってた。
空室の貼り紙を見た時は血の気が引いた。
俺はあの人を失ってしまったんだ。
愛してるとか一生二人で居るとか、どんなに口で言って来たって、誰にも秘密だった関係は信頼がなくなればあっさり切れてしまう。
狭い街だから、もしかしたらどこかで偶然に再会するかも、ってわずかな期待をしながら、気づけば10年。
あれきり会えないまま、時間が過ぎた。
あの人は、今どこで何をしているんだろう。
その後の消息を聞かないから、俺はあの人が生きているのか死んでいるのかも知らない。
馬鹿な俺。
どうしようもない俺。
止まらない涙を掌で拭って、鼻をすすった。
また、新しい一日が始まる。
「ごめん、しばらく会いたくない」
捨て台詞のように言った俺にあの人は何も言い返さない。
そのまま静かに泣き出した智君を一人置き去りにして、俺は振り向きもせずに店を出た。
それきり二度と会えなくなるなんて、思いもしないで。
何度も、何度も連絡を取ろうとして。
でも、会ったらまた酷い言葉を投げつけて傷つけるんじゃないかと怖くて、どうしても連絡出来なかった。
あの人が俺を裏切ったなんて、そんなことを信じたりするもんか。
そう思う一方で、なら、どうして俺に隠していたのかと疑念が湧いてしまう。
やましい事があったからじゃないの?
心は裏切っていなくても、身体は違う男に抱かれたの?
それならそれで、何がどうしてそうなったんだよ。
もしも本当に智君が誰かと関係を持っていたとしても、簡単にそんなことをする人じゃない。
何か事情があった筈なんだ。
それを話してくれたら許せるのに。
最後まで何も言わないあの人に腹が立って、言葉がキツくなるのを止められなかった。
意地になって吐かせようとした。
真実を伝えることも嘘を言うこともしないで黙ってるなんて卑怯だ。
じゃぁ俺達が二人でひっそりと紡いできた時間は?
一生、ずっと一緒にいるって約束は何だったんだよ!!
そう思ってた俺は、何て上から目線で傲慢で、自分のことばかりだったんだろう。
あの人は騙されて酒を飲んだだけだった。
全部俺の誤解だったってわかったのは、最後に会ってから半年程も経ってから。
謝りたくて、やり直したくて。
ようやく意を決して電話してみたけど、俺が知ってる智君の携帯電話はもう繋がらなくなってた。
空室の貼り紙を見た時は血の気が引いた。
俺はあの人を失ってしまったんだ。
愛してるとか一生二人で居るとか、どんなに口で言って来たって、誰にも秘密だった関係は信頼がなくなればあっさり切れてしまう。
狭い街だから、もしかしたらどこかで偶然に再会するかも、ってわずかな期待をしながら、気づけば10年。
あれきり会えないまま、時間が過ぎた。
あの人は、今どこで何をしているんだろう。
その後の消息を聞かないから、俺はあの人が生きているのか死んでいるのかも知らない。
馬鹿な俺。
どうしようもない俺。
止まらない涙を掌で拭って、鼻をすすった。
また、新しい一日が始まる。