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冬のニオイ

第30章 Baby blue

【潤side】

それが東京で智に会った最後だ。
中居さんが最初に言った通り、俺は本当に結構長い間北の地に居ることになって。
彼の笑顔はこのあとずっと俺の勇気の元だった。

仕事で落ち込んだ時。
淋しさに潰れそうなとき。
虚しくて自棄になりそうな時。
他にも、何かある度に。

智の笑顔を思い出すと、いつも必ず温かい気持ちになれた。

失恋の苦い気持ちはやっぱりしばらく残ったけれど、あの人が見送りに来てくれたから恨まないで済んだんだ。
自分を心の底から嫌いにならないで済んだ。
感謝している。



今でも縁は続いてて。
ウチの会社と智が居る設計事務所とで仕事上の取引がまだ継続しているし、智は一回こっちにも遊びに来てくれた。

表向きはタツオミを連れての旅行だったけど、実際のところはマジで櫻井さんとケンカしてて。
何と家出同然に、彼には無断でやって来てさ。
あれはマジで楽しかった。

迎えに来た櫻井さんの情けなく落ち込んだ顔は、悪いけど落ちてる時に思い出すと今でもクスッと笑える。
イイ思い出だ。



叶わない想いだったけれど。
智と出会って、惚れて、良かったと思ってる。
いつか、智の設計で平屋の日本家屋を建てるのが俺の夢だ。

でも案外、あの二人が家を建てる方が早いかもしれない。
届いた封書に収められていた嬉しい知らせを見て俺はそう思う。
やっと、おめでとうが言える。

智、あなたは俺にとって、きっと死ぬまで愛おしい存在だよ。
遠く雪の国から、今日もあなたの笑顔を想ってる。










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親愛なる皆様

日頃は格別のご高配を賜り、また親しくお付き合いくださることに心より感謝を申し上げます。

この度、私達、大野智と櫻井翔は、居住区においてパートナーシップ制度の宣誓を致しましたことをご報告申し上げます。

法的な効力は限定されたものとなりますが、二人の誓いとして熟慮の末に届け出ました。

まだまだ至らぬ私達ではございますが、この先の未来を共に支え合い、生涯寄り添って成長してまいります。

何卒、今後も変わらぬご指導とご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

皆様のご健康とご多幸をお祈りしつつ


202X.XX.XX

大野 智
櫻井 翔
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FIN.
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