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冬のニオイ

第1章 未送信BOX

あれで信じろって言われても無理だよなぁ、と自分でも思いました。

相葉ちゃんはお酒飲んだ時に何か盛られたんじゃないか、って言ってたけど、もうそれも憶えてないんだ。

今までいつも翔くんには、酒に飲まれるなって言われてたのに。
結局こんなことになって自分で自分が情けないです。

翔くんに会って誤解を解きたいと思っていたけど、もう、どの面下げて、って感じだよ。



あの日ね、あの人、翔くんの大学のことで大事な話があるから、って言ったの。
オイラとのことで翔くんの出世?に影響が出てるから、って。
人前で話さない方が良いでしょ、って言われて飲みに行った。

けど、のらりくらりって話そらされて。
ただ、翔くんが教授にとても信頼されてて、教授の娘さんとの縁談の話もある、って言われました。

それが結構きちゃって、平気な顔をしなくちゃと思って空きっ腹に飲んじゃったんだ。
それで記憶がなくなって、目が覚めたら朝で。
ホテルに一人で居ました。

オイラ裸だったからびっくりしたけど、流石にやったらわかるよ。
だから、本当にやってないです。
これだけは自信持って言える。



翔くん、俺ね。
中卒で大工やって、独り立ちする前に親方のじーちゃんが死んでさ。
じーちゃんのことは尊敬してたけど、やっぱり自分のこと、ずっと恥じてたよ。
今時中卒なんて、人に言えない、って。

翔くんが勉強教えてくれて高卒認定取れてからはマシになったけど、自分に自信なんて全然持てないです。

翔くんみたいに良い学校に行って、そのまま大学に残って、将来は教授になるかもしれない人と付き合ってさ。
長続きするわけない、ってどこかで思ってました。

そっちの世界のことはオイラ全然知らないけど、よくドラマとかでは派閥って言うの?なんか、いろいろあるんでしょ?

翔くんは女の子にもモテるし、元々しっかりした家の子じゃん。
オイラと一緒に居たらまずいんじゃないか、ってずっと思ってた。



でも、好きだったんだ。

告白されたときは驚いたけど、オイラが今まで会った人の中で、家族以外では翔くんが一番オイラのことを大切にしてくれた。

いつも優しくて、甘やかしてくれて、一緒に居ると心地良くてさ。
ごめんね、オイラばっかり大事にされて来たね。

今まで本当に有難うございました。

ごめんなさい。
さよなら。


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