
刑事とJK
第20章 夏祭り
『…欲しいの?』
ゆうひは男の子にデメキンを見せた
男の子は頷いた
『いいよ』
男の子は顔を喜ばせて、デメキンを受け取った
「ありがとう!!!」
そう言って男の子は走って行った
「ママ、金魚もらったあ!!」
「あらあら、誰に?」
「あのお姉ちゃん!!」
男の子はゆうひの方を指差した
その子の母親は笑ってペコッと会釈した
「まさきは売られて行ったな、もうジンギスしかいねぇな」
どこか嬉しそうな斉藤
『だから、やっぱりこいつはまさきだね』
ゆうひはクマを抱きしめる
「だから、こいつはジンギスって立派な名前があんだろ!?」
『センス無いにも程があんでしょ!!
何よジンギスって!!』
などなど、まさきかジンギスかの口論はしばらく続いた
―――――――――――
『そういえば、今日は8時から花火だよ?』
チョコバナナを食べながらゆうひは言った
「どこから打ち上げんだ?」
斉藤はチョコバナナを一瞬で平らげた
『確か…市役所近くの、田奈川の河原だったんじゃないかな?』
「ああ、あの辺りか…」
斉藤は指に付いたチョコレートを舐めた
「それなら、ちょうど公園からよく見えんじゃねぇか?」
『そうか、あんまり高い建物ないしね』
「それじゃ…7時40分か…
そろそろ行くか?」
『うん///』
公園に向かって歩き出したときだった
「きゃあああ!!!
引ったくりーー!!!」
悲鳴と一緒に聞こえてきた
振り返ると、人込みから走り抜ける男を見つけた
それに向かって手を伸ばす女性
斉藤は急いで女性に駆け寄った
「どうしたんすか!?」
「かばんを…盗られたの…」
女性は泣き声で斉藤に助けを求めた
舌打ちして、斉藤は男を追いかけて行った
『あっ、待ってよ斉藤…!!』
ゆうひも追いかけようとしたが、馴れない浴衣でうまく走れない
「先に公園行ってろ!!」
斉藤は走って行った
『…そんなぁ…』
