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刑事とJK

第34章 いざ出陣




「あんた、すげえ才能とかあると思うんだ…
ここから出て、生け花教室だとか、着物の着付け教室だとか、開いたっていいんじゃねぇか…?」



「わ、わたくしにはそんなことできません…」



千花は戸惑った




「出来ねぇって、試す前から決めつけんな。
あんたの25年をこれからどう使うかで、他の奴らも、あんた自身も、変われるかもしれねぇじゃねぇか」



斉藤は至って真面目な顔をしている



「わたくしが、変わるのでございますか…?」



「ああ、そうだ」



斉藤の、何かを確信して言う言葉…



千花には、大きな大きな言葉だった





「…あ…」



千花は体を震わせた




「ありがとうございます…ありがとう…ございます…」



さっきまでの泣き顔とは違って、涙は流してはいたものの、歪ませた顔は子供のようだった









―――――――――――






翌日

昨日の雨は上がり、今日は快晴だった



「じゃあね、母さん」


「お邪魔しました、お母さん」



真理子と藤野は、門まで送りに来てくれた光子に挨拶した



「いいえ、またいつでもいらっしゃい」


光子は優しく微笑んだ



「お前ら、さっさと乗れ」


斉藤は近くまで車を回して、窓を開けて言った


「もー、せかさないでよねー」

「斉藤、お前には名残ってもんがないのか?」


「るっせぇ、そんなにここにいたけりゃいとけ。オレは帰る」


「ほんとせっかちねっ」


「なっ」



「うぜえ、黙れ」




二人は車に乗り込んだ


斉藤が窓を閉めようとしたとき、光子の後ろから千花が出てきた



「正貴さん!!」



「?」



「わたくし、自分で生きます…!!誰にも、何にも縛られない人生、生きてみせますから…!!」


斉藤は笑って片手を上げた



「知ってらー」



そして窓を閉め、車を走らせた





光子と千花は、見えなくなるまで見送った








「正貴さん…ありがとう」





「何か言いましたか?」




「いいえ光子さん、なんでもございませんよ」




その時光子が見た千花は、今まで見た中で一番晴れた笑顔だった





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