
刑事とJK
第43章 船上の殺人事件
よく晴れた日のことだった
「よっす」
藤野は笑顔で入って来た
その手の内には、灰色のファイル…
「出た」
斉藤は手に顎を乗せている
「出た、ってお前なー…、せっかくおいしい話を持って来てやったのに…」
「冗談だ。
で、中身は?」
「今回は…、こんな感じだ」
藤野はファイルを斉藤に手渡し、斉藤は中身を見た
「…殺人予告?」
「ああ。まぁ読んでいけ」
斉藤はザッと目を通す
内容はこうだった…
ある大手会社の社長、江口健夫(エグチ タケオ)のもとに脅迫状が届いた
"来週行われる遊泳船パーティーに出席したら、命はないと思え"
脅迫状にはこう書いてあったそうだ
遊泳船パーティーには日本国内に留まらず、多くの大手企業の社長などが出席するようだ
このパーティーは社長同士が交渉したりもして、良ければ手を組み、会社の利益向上を成すことが出来る、そんな絶好の場らしい
よって、江口ももちろんこのパーティーには参加する気でいる
しかし先程の脅迫状により、不安の色は隠せない…
「だから、護衛しろってか?」
「護衛っていうか、まぁ気休めみたいなもんだろ」
「何か条件は…?」
「斉藤には若社長夫婦ってことで、船に乗り込んでほしい」
「夫婦?」
「ゆうひちゃんでも連れていけ」
「ばっ…、
馬鹿か!?
んな危ねぇとこ、連れていけるわけねぇだろ!!」
「だって豪華客船だぞ?
俺は旅行気分で真理子と一緒に行くからな」
「おめぇも行くのかよ!!
じゃあオレは行かなくてもいいんじゃねぇか!?」
藤野はキリッと目つきを変えた
「船の中は、ほとんどが顔見知りだ。
そんなところで、俺やお前みたいに、初めて見る顔の社長ひとりがいたら怪しいだろ?
だから、社長役を複数作っとく必要がある…
犯人にバレでもしたら面倒だからな」
「…でもゆうひは…」
「個室で待たせとけばいいだろ。
俺も真理子にはそうしてもらうつもりだ」
「…わかった」
「よし、お前にはお付き役で嘉山に付いてもらう。
いいな?」
「…ああ」
「細かいことは、今から説明する…――――」
