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クリスマスイブ

第2章 美鈴ちゃん

小さな女の子がこんな日付けが変わるような深夜にここら辺を1人で出歩いているのは不審だと思った僕だが、もっとビックリさせたのはその女の子の服装である。
白いワンピース、そのワンピースはパフスリーブの半袖で足は素足に白のペタンコ靴。
この真冬の12月にそんな格好してたら震えがくるうえ、吐く息は真っ白なはずなのにその女の子には寒そうな素振りが全く無いのだ。
ただ、心配そうに僕を見つめるだけだった。

「大丈夫?」

再度聞く女の子。
僕は取り敢えず起き上がると女の子に問うた。

「僕は大丈夫。でも、君…寒くない?」

女の子は首を傾げる。
本当に寒くないのだろうか?
見てるこっちが寒くなりそうなのに!
僕は転んだ時に落としてしまった白い袋を拾い上げる。
中にコートみたいな…いいや、駄目だ。
中には子供たちのプレゼントがつまっている。
だからってこの子をこんな格好のままにしとく訳にもいかない。
僕は悶々と考えた末、サンタクロースの服の下に来ていたダウンコートを差し出す。
女の子には少し大きいし、僕は少しだけ寒くなるけど、女の子に風邪をひかせるよりはマシだ。

「ありがと。」

女の子は可愛らしく笑う。
そして僕に聞く。

「お兄さんはサンタクロースなの?」

女の子の少し不思議そうな顔。
そりゃそうだ。
僕のような若い新米サンタクロースなんて子供が想像するサンタクロースのおじいさんとはかけ離れているのだから。

「まあ、一応ね。新米サンタ。なんていうのかな?サンタクロースってのは一種の職業なんだ。だから、もちろん、おじいさんサンタもいるよ。」

僕はサンタクロースはおじいさんという子供の夢を壊さないように気をつけながら言う。

「サンタクロースがお仕事?じゃあ、お兄さんサンタにもお名前があるの?」

結構、幼い割に鋭い子だ。

「まあね。僕の名前は柊一。クリスマスによく見る赤い実の植物のヒイラギに一で柊一だ。」

「柊一…さん?」

「お兄さんで良いよ。呼びにくいなら。」

僕は微笑む。
 
「君の名前は?」

「美鈴。美しいにジングルベルの鈴で美鈴。」

僕がまさにさっき音痴ながらに歌っていた歌によく似合う名前だ。

「良い名前だね。」

僕がそう言うと美鈴ちゃんはニッコリ笑う。
ところで彼女はどうしてこんな時間にここにいるのだろう?
それにこんな寒い格好で…。

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