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僕はサンタ帽を被り直すと彼女の手を引いて家から家へと渡り歩いた。
サンタさんは煙突から入るというが、今時煙突がある家は数少ない。
じゃあ、どうやって入っているかって？
実は子供がいる家庭の合鍵が本部に厳重に保管されているのだ。
そしてクリスマスイブの夜にだけ持ち出され、その地区の担当サンタに合鍵を渡されるのだ。
因みに鍵はその家の子供が大人になっても保管されているらしい。
次世代の子供にまたプレゼントを届けるためだとか。

「ねえ、お兄ちゃんはなんでサンタさんなの？」

いきなりの美鈴ちゃんの質問。
僕は少し驚く。
なんでサンタクロースなのか？
僕もなんでサンタクロースになったのか忘れてしまった。
気付いたらサンタクロースになってたというのか…

「僕もね…分からないんだ。」

正直に言う。

「でもね、サンタさんは無差別に選ばれている訳じゃないんだと思う。」

そう、サンタクロースが誰でも良い訳は無い。

「僕がなぜサンタさんになったかは分からないけど、意味はあると思う。」

そう、サンタクロースになったのには何か意味はあるはずだ。
美鈴ちゃんには多分、少し難しい話かも知れない。
でも、彼女は真剣に耳を傾けてくれた。
本当に不思議な子、でも良い子。