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クリスマスイブ

第3章 サンタクロース

そうこうしながら最初の家に着く。
最初の家は4歳の男の子。
車が大好きな子はミニカーが欲しいと言っていた。

「メリークリスマス」

そう呟いて可愛らしい寝顔で寝ている男の子の枕元にブルーの包装紙に包まれた小さい箱を置く。
中身はもちろんミニカー(スカイライン)である。

次の家はお隣の5歳の女の子だ。
女の子らしくシルバニアファミリーのお家が欲しいと言っていた。

「メリークリスマス」

僕はそう呟いてスヤスヤと寝息を立てる女の子の枕元に赤い包装紙に包まれた少し大きめな箱を置く。

次から次へと家を渡り歩く。
プレゼントは様々だ。 
ミニカー、お人形、駒、ぬいぐるみと言ったベーシックなものから、トランプ、UNO、人生ゲームと言ったボードゲーム系を欲しがる子もいる。
少し大人の子はインスタントカメラやオルゴール、本と言った、おおよそプレゼントらしく無いものを欲しがる子もいた。
まあ、僕も小学校の高学年の頃には誕生日にカメラを買ってもらい、クリスマスには本やDVDを欲しがっていたのだからおかしなことは特にないのだが。
僕は全てのプレゼントを配り終わり、ふと思う。

「美鈴ちゃんは何が欲しいの?」

美鈴ちゃんは顔を上げる。
袋の中にはもうプレゼントが残っていない。
ということは彼女は僕の担当地域では無い地区の子ということになる。
美鈴ちゃんはにこっと笑うと僕に白い封筒を差し出す。

「僕に?」

彼女がコクっと頷くのを確認すると僕は封を切った。
中には白いメモが1枚。
そのメモには…

柊一サンタクロースの笑顔

「え?」

「お兄ちゃんの笑顔が見たいな。」

僕は驚く。
この子が欲しいのは僕の笑顔?
本当にそんな物で良いのか?

「本当にそんなので良いの?」

「私、柊一さんの笑顔が見たいんだ。だって…とても優しそうに笑うから。」

僕はそう言ってくれた彼女の言葉が素直に嬉しくて最高級の笑顔をプレゼントした。

「ありがとう!柊一くん!」

そう言った途端、彼女の姿は光り輝く。
僕は眩しくて思わず目を閉じる。

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