三匹の悪魔と従者たち
第9章 地上の月
ドワーフの里。
それは小規模の同族が集まる集落で成り立っている。
それぞれに族長という者はいるが、魔族のように王などという存在はない。
根がどちらかというと穏やかで、勤勉な性格のドワーフの中でも、そこそこの規模の里で、若くして族長に連れられてやって来た、エリートのドワーフ。 それがオレだ。
魔族の王が参加するという今晩の晩餐会は興味本位が八割。
昨今我々とと親交よく王政主義を取る彼らとは、一体どのようなものだろう?
「本日は、お招きに預かり至極光栄である。 しかし、なぜ我らの方がここに出向かなければならない? 強大な戦力を誇る我らにそうさせるとは、お前たちはひょっとして血を見たいのか……とはいえ、外交も無視は出来ぬのよな─────って、分かってはいるんだけど。 いちいち疲れちゃうし。 けども…でも、それはわしの健康管理に問題があるんだよね」
ドワーフの里、それらの要人が集まるこの場で、魔王サタンが挨拶をしていた。
「日頃から、地上の農作物や家畜などの食糧を提供してくれているといってもな……フフフ。 なによりも、我らの欲を満たすのは滴るその血。 苦痛に喘ぐ家畜、その表情がなによりも、我ら魔族の渇きを癒すからな! ……可哀想だとは思うんだよ。 でも、自らが汚れるのを嫌悪する者に、その享受を得る権利は無いよね? そんなのは、なんだか偽善的だとわしは思うんだよ」
この小太りの王は情緒不安定なのだろうか。
そもそもオレがここに呼ばれたのも、自分が高名な医師として複数の里で名を馳せているからである。
「彼らと接すればお前も分かる」そう言う族長に連れられては来たものの、逆にサタンが心配になってしまった。
「しかし、美しいな」
思わずそう呟いてしまった。
彼のここには無い、黒い色の髪と瞳。
加えて、小さな背丈と守りたくなるような容貌。
脂肪に埋もれて平坦な顔面。