三匹の悪魔と従者たち
第2章 悪は善し
「にしても、悪魔の嫁に相応しいって、どういう意味よ?」
生まれて初めて思いっきり羽を伸ばせる機会を奪われた気分になったゴウキが、投げやりに先ほどの父親の言葉の意味を弟に問う。
「さあ……死んだ母さんみたいな? 金遣い荒くってセックス大好き。 気に食わない部下はすぐ蠱毒の谷に突き落とす。 当代一の美女にして典型的な悪女気質? とか」
黙っていても女性が寄ってくるジンには人の噂話などがよく耳に入る。 そんな彼が視線を空に泳がせながら言った。
「……よくあの父さんと結婚したよね。 僕そういう女性、ちょっと苦手かも」
「女なんざ、惚れさせたらこっちのモンだろ。 なあジン?」
彼らにとって、長男がやっと物心がつき始めた時分に亡くなった母親の記憶は曖昧だ。
「だね。 それに、馬鹿じゃないんなら、王ともなると妻は寄生主に害は与えない。 ゴウキは言わずもがな、ユーゴ。 お前もその辺歩いてたら女がホイホイ寄ってくる位のルックスしてるんだしさ」
──────……こんな三人ではあるが、王子らしくそれなりの帝王学は幼い頃から叩き込まれていた。
魔術を初めとした勉学、体術、社交術、もちろん女性の扱いも言わずもがな。